年の瀬が押し迫ってきた土曜日。
梅田にある大きな書店の前、僕はスマホを片手に一人大型モニターを見つめていた。
待ち合わせスポットとしてよく利用される場所ということもあり、周辺に立ち止まっている人たちの多くが僕と同じく誰かと待ち合わせをしているのだろう。
一人、また一人と待ち人との対面を果たして街の雑踏に消えていく男女を尻目に、僕はお気に入りの腕時計に視線を落とした。
13時40分。
約束の時間からは既に10分が経過しているが、お相手が現れる気配がないどころか連絡の一つも届かない。
僕はボソリと呟きながら待ち合わせをしている相手とのDM画面を開くと、移動することを一応伝えるためのメッセージを入力した。
出来上がった短い文面を送信しようとした矢先、お相手からのメッセージ受信を告げる吹き出しが表示された。
遅くなってごめんなさい!
こんな日に限って残業になってしまって…。
急いで向かうので後10分ほど待っていてもらえませんか?
僕は送ろうとしていた文面をすべてクリアすると、急がなくていいから気を付けて待ち合わせ場所に来るよう彼女に伝えた。
彼女はDMでの宣言通り、ちょうど10分後に待ち合わせ場所に姿を見せた。
このブログを見て「自分も”気持ちいいセックス“を楽しんでみたい」とツイッターのアカウントに連絡をくれた女の子。
詳しくは聞いていないが、ベンチャー企業で電話対応のアルバイトをしているらしい。
白いダウンジャケットの裾から伸びる細い脚が否応なくスタイルの良さを期待させる。
24歳という年齢より幼く見える可愛らしい顔つきの彼女がセックスへの興味を抑えきれずに僕に連絡をくれたと思うと、何となく嬉しく思ってしまう。
寒かったですよね?
事前に顔写真を見せ合っていたこともあり、すぐに僕を認識した彼女は申し訳なさそうに第一声を発した。
僕は気にしなくていいと笑顔で伝え、目的地であるホテル街の方へと彼女を促して歩き始めた。
かなり人懐っこいタイプの女の子で、ホテルまでの道中も特に緊張している様子もなく、楽しく会話することができた。
よくよく考えると彼女はツイッターのアカウント名もドットが1つだけで、僕は彼女のことをちゃんと名前で呼んだことがない。
彼女自身に確認すると「鈴奈」と呼ばれたいと笑顔で答えてくれた。
夕方から友人との会食があるという鈴奈の予定も聞いていたので、短い時間を最大限に使うべく最も手近に建つホテルに入って二人で部屋を選んだ。
チェックインしてみるとパネルで見たのとは全く別物とも言えるベッドとテーブル、ソファがコンパクトに配置された少し手狭な部屋だった。
僕たちは笑い合いながら部屋の中を軽く探索してから壁際にかけられていたハンガーにそれぞれ上着を掛け、どちらからともなくマスクを外して並んでベッドに腰かけた。
覚悟はできてるよな?
僕が冗談交じりに言うと鈴奈も普通に会うより気持ちよくなれるなんてむしろご褒美だと笑顔で応じてくれた。
初対面であることを忘れてしまいそうな楽しい会話の延長線上で僕がスッと顔を近づけると鈴奈も黙って目を閉じた。
そのまま二人の唇が重なる。
ぷっくりと柔らかい感触が伝わってくる。
心地良い感触を楽しみつつ、自分の唇はカサついたりしていなかったか少し不安になってくる。
…待ち合わせ場所に着く前にリップクリームは塗ったけど、あれって何時間前だっただろう。
そんなことを考えていると、鈴奈の舌が僕の唇を割り広げてきた。
小さな隙間からねじ込まれた舌に僕も優しく自分の舌を絡めた。
くちゅ、ぴちゅ、くちゅ…
淫らな気持ちを掻き立てる水音が部屋に響いた。
僕は鈴奈の華奢な身体を優しく抱き寄せて横向きの状態でベッドに押し倒すと、オーバーサイズ気味のカーディガンの裾部分から右手をスッと滑り込ませた。
だめ…まだシャワー浴びてない…からぁ…
僕は鈴奈の言葉を無視して更に内側に手を忍び込ませていった。
白いTシャツの内側で滑らかな素肌を指の先でツーっと撫で上げ、クルクルと円を描く。
くすぐったいぃ…
鈴奈がもじもじと身をよじる。
僕は鈴奈の耳元で囁いた。
鈴奈の全身がビクッと反応するのを感じた。
僕は一切手を止めることなく小さな耳たぶを甘噛みしながら、追い打ちをかけるかのように彼女の身体に起こっている反応を言葉にしていく。
わき腹を撫でていた右手をゆっくり背中へ移動させる。
鈴奈の息遣いはさらに荒くなって腰がクネクネと揺れていた。
腰の動きもすごくいやらしくて、もっとしてって言ってるようにしか見えへんけどなぁ?
鈴奈の身体はまだまだ開発途上で、このときの“くすぐったい”という反応も決して嘘ではなかっただろう。
だが、彼女の反応からは触られれば触られるほど膨らんでいく快感に戸惑いも感じられた。
これまでに関係を持った男たちが触ろうともしなかった部位から感じるムズムズするような快感が鈴奈の脳を蝕んでいく。
僕は好奇心旺盛な彼女の理性が未知の快感に抗い続けることなどできるはずはないと確信していた。
んんぅ、あっ…ふぁぁぅっ
しばらく続けているうちに、“気持ちよさ“が“くすっぐたさ”よりも優位に立っていく。
色欲にまみれた甘い吐息が漏れ、恥じらいからか頑なに変化を拒んでいた表情が一気に瓦解した。
鈴奈のいやらしいメスの一面が露見した瞬間だった。